まずは40カ国語以上で翻訳されたマイケル・ボンドによる小説シリーズが原作の『パディントン』。主人公は、ペルーからロンドンにやって来た野生のクマながら“実写映画”だ。礼儀正しさと美しい言葉遣いの“英国紳士”スピリットを持つギャップが、なんともかわいい。パディントン駅でブラウン一家に出会い、ドタバタ劇がありつつ、次第に心を通わせていく。
393367 (C) 2014 STUDIOCANAL S.A. TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S Paddington Bear™, Paddington™ AND PB™ are trademarks of Paddington and Company Limited.
雨のロンドンが見られるのは、まずはタクシーで駅からブラウン家に向かう道中。運転手がパディントンのためにロンドン観光をしてあげる粋な(?)計らいで、ビッグベン、タワーブリッジ、観覧車のロンドン・アイなどの名所が次々と映し出される。
その後、ある事情でブラウン家を出た失意のパディントンが雨の中でたどり着くのがバッキンガム宮殿。先述のシーンもこのシーンも夜の時間帯だが、ライトアップされた建物が雨に輝く様が美しい。
ウディ・アレン監督の『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(※プレミアム見放題パック)は、タイトル通り、雨の日のニューヨークが舞台。大学生のギャッツビー(ティモシー・シャラメ)は、課題で有名な映画監督にインタビューすることになった恋人のアシュレー(エル・ファニング)に同行してニューヨークへ。生粋のニューヨーカーであるギャッツビーは、アリゾナ生まれのアシュレーに街を案内すべく、デートプランを立てる。
だが、思いがけない出来事が重なり、雨が降り始めた頃から、ギャッツビーの恋模様の雲行きにも変化が。雨に濡れるニューヨークの街並み、そしてピアノが趣味のギャッツビーに合わせたジャズと一緒に雨音もBGMとなって物語を彩っていく。
邦画からは、二ノ宮知子の人気漫画を原作にしたテレビドラマ版の続編となる映画『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』。2022年春ドラマでも活躍する上野樹里と玉木宏が主演し、ピアノを専攻する“のだめ”こと野田恵(上野)と、一流の指揮者を目指す千秋真一(玉木)の恋と音楽への情熱を、ギャグを交えて描いた作品だ。映画の舞台はヨーロッパで、主にパリで物語が展開。
62829 (C) 2009 フジテレビ・講談社・アミューズ・東宝・FNS27社
ネタバレになってしまい、申し訳ないが、雨のシーンは前編のクライマックスで訪れる。「いつかオーケストラで共演したい」という思いを胸に抱くのだめが、どんどん先を歩む千秋に焦る様子に、コンセルヴァトワール(音楽学校)の先生は「彼と少し離れた方がいい」と提言。落ち込むのだめの心情を表すかのように雨が降り始め、やがてどしゃ降りに。美しい歴史的建物が連なるヴァンドーム広場が雨に煙る様は悲しく映るのだが、それだけに印象的な名シーンだ。なお、後編もすぐに見たくなるはずなので、併せてぜひ。
そして東京の雨の景色は、少し趣向を変えてアニメーション映画を紹介したい。大ヒットした2019年の『天気の子』でも美しい雨の描写が話題になった新海誠監督が2013年に送り出した『言の葉の庭』。梅雨の季節に日本庭園で出会った、靴職人を目指す少年と歩き方を忘れた女性の物語だ。
58030 (C)Makoto Shinkai / CoMix Wave Films/提供バンダイチャンネル
東京・新宿エリアを舞台に、夕立から豪雨まで、登場人物の心情に沿うかのように表現された雨。画面を上から下に流れ落ちる雨の筋、路面や水面に打ち付ける雨粒、草木を濡らす雨露…、実にさまざまな雨が作り出す景色に心を奪われる。
(文・神野栄子)