世界中に戦争を引き起こし、兵器を売りつける謎の組織「黒い幽霊団(ブラック・ゴースト)」に誘拐され、最強の兵士=兵器であるサイボーグに改造されてしまった少年・島村ジョーと、世界各地から集められ、同じように改造された8人のサイボーグ戦士達が反旗を翻し、襲い来る黒い幽霊団の刺客に立ち向かう姿を描いた、ファン垂涎の舞台化となる。
主人公であるサイボーグ009=島村ジョーを演じる七海ひろき。赤ん坊でありながら、通常の成人を超える知能を持つサイボーグ001/イワン・ウイスキーとして声の出演をする天華えま、そして唯一の女性サイボーグ003/フランソワーズ・アルヌールを演じる音波みのり。インタビュー前編では宝塚歌劇団星組で共に舞台創りに邁進した絆の深い3人に、新たな舞台で再会する喜びや、意欲を聞いた。
更に後編では、Rakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品から、3人のおすすめ作品もご紹介。それぞれのセレクト理由や、当時の思い出もたっぷり語ってもらった。
(取材・文/橘涼香 撮影/中川容邦)
インタビュー後編はこちら
──改めて今日こうして、お三方で揃われていかがですか?
七海:めちゃめちゃ嬉しいです。
天華:こんな機会があるなんてと、ワクワクしています。
音波:本当に嬉しいです。
──製作発表記者会見では、七海さんと音波さんが揃われる!と心躍っていたのですが、そこにまさか、まさかで天華さんもご出演になるということで、皆様の関心もますます高まっているという段階ですが、まずその舞台「サイボーグ009」ご出演のオファーを受けられたときの気持ちからお聞かせいただけますか?
七海:不朽の名作である石ノ森章太郎先生の「サイボーグ009」という作品が、連載開始から60周年を迎えて初の舞台化、その記念すべき公演で島村ジョー役を、ということだったので、本当にびっくりしました。「サイボーグ009」を舞台化する、という企画自体がすごいことですし、改めてこれだけ長く皆さんに愛されている作品だということを実感し、責任重大だなと思っています。皆様の理想を壊さないように精一杯頑張りたいです。
音波:私はお話を伺った時には、石ノ森章太郎先生だと「仮面ライダー」は知っていたのですが、「サイボーグ009」のことはお恥ずかしいことによく存じ上げていなくて。石ノ森先生の作品だとお伺いして一から読ませていただきましたら、あっという間にどんどん引き込まれました。何しろ60年の歴史がある作品ということで、その歩みの中で、少年マンガ誌だけではなく、少女コミック誌へも描かれていたり、映像作品など、本当に奥深い世界が広がっていることに感銘を受けました。これほど長い歴史を紡いできた作品の、60周年を記念した初の舞台化というタイミングでお声がけいただけたことに、本当に身の引き締まる思いがしましたし、また七海さんとこういう形でお芝居をさせていただけるということがとても嬉しくて、私の出せる力の限りを尽くして頑張りたいと思っています。
天華:私もまずとても驚きました。石ノ森章太郎先生が生み出されたたくさんの作品のなかでも、代表作と呼ばれているものを、60周年記念で舞台化する。特に登場人物が様々な特殊能力を使う作品ですから、映像効果や照明や音響などを組み合わせての表現や技術がすごく発達した、今だからこそ舞台化が可能になったんだなと感動しました。何よりひろきさんが島村ジョーを演じられるということで「はい、わかります!ピッタリです!」という納得感が大きかったなかで、私はまさかの赤ちゃん役で!
七海:そうだよね。
天華:宝塚退団後、初めていただくお役が赤ちゃんになろうとは!と思ったのですが(笑)、退団して色々なことに挑戦していきたいと思っているいま、声だけの出演というのは、これまででしたら考えられないことだったので、全く新しいことにチャレンジさせていただけるのは本当に幸せだなと思いましたし、私の舞台などを観て選んでいただけたとお聞きしましたので、皆さんが求めていらっしゃるイワン・ウイスキーになれるように頑張ろうと思っています。
──宝塚退団後の最初のお役柄が「赤ちゃん」と言うのは、おそらく例がないのではと。
天華:はい、ですからまさに新しく生まれ変わった、ということで。
七海:あ、素晴らしい!そうだね!
天華:はい、ここからスタートさせていただきます、というところを皆様にご覧いただけたらいいなと思っています。
──こうした作品で、男性の俳優さんに交じって主人公を七海ひろきさんが演じる、ということに対して「どうして?」という感覚ではなく、天華さんがおっしゃったように「あぁ、ピッタリですね」と、ごく普通のキャスティングと感じられるようになったのは、やはり七海さんが退団後、パイオニアとして新たな道を切り拓いていらしたからこそだと思います。いまの時点で、それぞれお役柄の何を大切に演じたいと思われていますか?
七海:島村ジョーは、憂いや切なさ、孤独感など、どこか寂しさのある人物なのだと、石森プロの方から言っていただいて。それはきっと彼の出生であったり、サイボーグになるまでの来し方から培われてきたものだと思うのですが、それらを踏まえた上で、優しさが全面に出ているキャラクターだなと私は読んでいて思いました。彼が悪と戦うのも優しい心からで、戦いたくて戦っているわけではない。そういう彼の持っている、芯はあるんだけれどもちょっと迷ったりもする、大人になりきれていない部分を大切に表現していけたらと思っています。
天華:色々な映像を拝見したのですが、イワンはあまり感情が伝わってこない役で。でも仲間の作戦などには赤ちゃんなのにいち早く気づいてテレポーテーションをしたりしますし、なかでも今回の脚本を読ませていただいた時に、仲間をすごく大事に思っているんだ、ということをすごく感じたので、そうした部分を声だけで表現するのは初挑戦ですが、ひろきさんというその道の大先輩がお近くにいてくださいますから、ご指導もいただきながら、仲間のためにみんなに語り掛けているんだというところがきちんと出せたらいいなと思っています。
音波:フランソワーズは、本当は戦いたくないのに、自分が戦いの道具として扱われることに対して強い嫌悪感があるんです。仲間のサイボーグたちにもそれをずっと伝えていて。
七海:そういう場面たくさんあるよね。
音波:そうなんです。「もう戦いたくない」「いつになったら平和に暮らせるの?」と常々言って、平和を願い続けているところが、サイボーグのなかで唯一女性であることも含めて、どの時代でも女性や子供たちが、男性とは違う目線で平和を願ってきたことの象徴的な役どころになるのかなと思っています。特にフランソワーズは、原作だと他のサイボーグたちよりも改造されている部分が少なくて、生身の人間に近いんですね。はじめはサイボーグ役を演じるのだから鍛えなければ!とジム通いに精を出したりしていたのですが……
七海:いやいや、それはちょっと…(笑)
天華:はるこさん(音波の愛称)、筋肉は既に十分だから!
音波:私、宝塚時代には結構筋肉がつきやすいタイプだったんです(笑)。でも退団して今年の夏で2年経つので、ジム通いは続けているのですが、それでもやっぱり筋肉が落ちてきていたので、舞台「サイボーグ009」に出させていただくからには、もっと鍛えなければならないと思って、より熱心にジム通いを続けていたのですが、フランソワーズってそこまでガチガチにしなくてもいいのかなと……。
七海:きっとそんなに戦うシーンないよね?(笑)
音波:そうなんです(笑)。でもやっぱり人並外れている能力の持ち主ではありますから、皆さんのサポートに回れる、そして平和を願う象徴的な母性を持った女性を演じられたらいいなと思っています。
──いま「そんなの当たり前でしょう?」ではなく「平和って大切なんだ」と一人ひとりがちゃんと意識して、口にも出さないといけない時代が来ている気がするので、そういう現代に「サイボーグ009」が舞台化される意義はとても大きいと思います。七海さんと音波さんは既に製作発表記者会見でパフォーマンスをされていらっしゃいますが、あの場を体験されてみていかがでしたか?
七海:まず自分のことを言うと、最大加速マッハ3~5で動ける島村ジョーの動きには遠く及ばないなと感じたので、様々な演出のお力も借りつつ、本番までにもっと早く動けるように頑張らなければ、という反省がすごくありました。ただ、そうした自分のことを置いておくと、キャストの皆さんがそれぞれキャラクターにぴったりで、スクリーンに同時に原作漫画の絵が出るのですが、それに見事にハマっていて。皆さんとはあの場が「はじめまして」だったのですが、一気に盛り上がって仲良くなることができました。このカンパニーの素敵な雰囲気のまま、お稽古に臨んで、本番に行きたいなと思えた製作発表記者会見でした。
音波:私は結構歩いているだけ、という感じだったんですけれども(笑)。
七海:いやいや、キマってたよ!
音波:そんな。でも本当に高橋駿一さん演じる002/ジェット・リンクとか、すごく激しい動きを、しかもあの日に、いきなりついた殺陣なのに…
天華:えぇ?そうだったんですか?!
音波:そう、その日に集合して、すぐに殺陣がついて。
七海:私は事前に殺陣をつける日が一日あったんですが、皆さんは会見の2時間くらい前に殺陣がついて。
天華:え~信じられない!
音波:映像と合わせた曲と、それぞれの入れ替わりの練習を1回カウントでやって、2回目に通して、はいじゃあ本番、という感じだったので。
天華:すごい!
音波:私も皆さんがパフォーマンスされるのを袖から見ていたのですが、ここまで皆さんが身体能力高く瞬時にこなされるのを拝見して、これはお稽古を重ねて創っていったら、すごいものになるだろうと思いましたよね!
七海:思った。この一瞬でこれだけできるんだから、本番の舞台はどんなものになるんだろうって、ワクワクしたよね。
天華:私もいま初めて伺ったことばかりなので、すっかりお客様側の気持ちなのですが(笑)、ひろきさんが連絡をくださって、私も生配信を見ていたんですよ。
七海:そうそう「今から製作発表記者会見だよ」って連絡したんだよね。
天華:はい、それでずっと最初から見ていたので、まさかそんなに短時間であのパフォーマンスができあがっていたとは想像もしませんでした。
──きっと皆さんいま驚いていらっしゃると思うので、ますます本番の舞台に期待が高まりますが、宝塚歌劇団在籍時代に星組で共に活躍されたお三方が舞台「サイボーグ009」で久しぶりに共演を果たすということで、改めてお互いに感じている魅力を教えていただけますか?
七海:はるこは、ふだんのトータルコーディネートですとか、舞台の上での居方へのこだわりがとても強い人なんです。自分もそういった部分へのこだわりは強い方だと思っていたのですが、その上を行く人に初めて会ったな、と思ったくらいで。
音波:いえ、お兄様(七海)の美意識へのこだわりほど、すごいものはなくて!
七海:だからお互いそう思っていたよね。私が星組に組替えした時に「美意識がすごいね」とずっと2人で言い合っていたくらいで。
音波:お兄様の自己プロデュースには、本当に刺激を受けました。こうでなければならないんだ、もっと頑張らなければと。
天華:とにかく可愛いですよね。この間私の退団公演を観にいらしてくださったのですが、銀橋で「可愛い人がいるな~」と思ったらはるこさんだった。
七海:舞台上からわかったんだ!
天華:そうなんです。「可愛いな~、えっ?はるこさん?はるこさんだ!」って二度見しました(笑)。
音波:その舞台からぴーちゃん(天華の愛称)が飛ばしてくれた目線が、きっちりお兄様を受け継いでいたの!誰しもが虜になってしまう目線。
天華:「銀橋に行った時には、全てのお客様を引き連れなさい」というひろきさんからの教えを守っています。
七海:それ色々なところで言ってない?(笑)
天華:言ってます!
七海:でも私も宙組時代に上級生から教えられたことなんだよね。それを星組で伝達したので、さも私が生み出したかのように伝わっているんだけど(笑)
天華:そうなんですね!ひろきさんが宙組から星組にいらした時、衝撃的だったんですよ。よく「新しい風が吹く」って言いますけど、最早風なんてものではなく嵐でした(笑)。私は『ガイズ&ドールズ』の新人公演でひろきさんのお役をさせていただいたのですが。
七海:そうだった!私が星組に組替えして初めての大劇場公演で。
天華:絶対にこの人の元で学ばせていただきたい!と願っていたので、夢が叶って嬉しくて「新人公演で演じさせていただきます」とご挨拶に行ったら「星組ってこんなタイミングで挨拶にくるんだ」っていうのが、最初の返しで(爆笑)
音波:お兄様も新鮮だったんですね!
七海:もうちょっと気の利いた返しをしないとダメだよね(笑)
音波:そういうことって組によって全く違いますものね。でもぴーちゃんが、本当にお兄様のことを好きで、尊敬しているんだなというのはすごく伝わってきていたから。
天華:公開告白みたいですけど(笑)全てが大好きで、この方のような男役になりたい、学びたいってずっと思っていました。
七海:私がぴーすけ(天華)のことを最初に知ったのが『眠らない男ナポレオン』の新人公演を観に行った時で。
天華:えっ?そんなに前にですか!?
七海:そう、誰かから情報として「すごくいい子が星組にいるんだ」と聞いて観に行ったのよ。そうしたら、すごく心のある芝居をする子だなと言うのと、わー華やかだなというのが第一印象で。名前に華やかっていう字も入っているしね(笑)。それが最初で、星組に行ったらなんだかすごく慕ってくれて「こんな私を慕ってくれてありがとう」と思ったし、とっても気が利く人なので。
天華:そんなことないです。
七海:ううん、いつも先々に行動してくれるから、私はとっても助かってた。そんな風に新人公演時代から知っているので、作品ごとに一つひとつキャッチしていく能力がとても高い人だなと感じます。
音波:先々っていうのはすごくわかります。ぴーちゃんに1個訊いたら5個ぐらい返してくれるんですよね。そして、お兄様のことは、さっきから言っていますが、私はお兄様と呼ばせていただいてるのですが、包容力がすごい方で。誰に対しても優しくて紳士的で、星組の「みんなのお兄様」だったんです。それが定着して、私もですけれど、卒業しても「お兄様」と呼び続ける人がたくさんいるのですが、それを聞いている新しい現場の方々も「かいちゃん(七海の愛称)じゃなくお兄様って呼びたくなる」ってよくおっしゃるんです。とても温かく周りを包んでくださるオーラを、みんなが一緒に感じ取れる、とても魅力的な方です。特に星組は、自分のカラーや感じたことを大きく表現する、まずできる限りアウトプットしてやり過ぎたら、間引いて行こうというやり方なので、はじめはお兄様はとてもクールに見えていたところがあったのですが、次第にうちにある情熱をどんどん出されるようになって、お兄様ご自身も変わっていかれたところもありました。
天華:関西の血が濃い感じですからね、星組って。
七海:確かに宙組にはスタイリッシュな雰囲気があったので、星組にきたら包み隠さない人たちなんだなとは思った(笑)。
音波:ぴーちゃんは成績優秀で小劇場作品にも早くから出ていたので、成長を遂げるごとに「自分はこうしたい」というものがすごくハッキリでてきたし、下級生の面倒も率先して見てくれて、男役の子はもちろんだけれど、バレエが得意だったから、娘役の踊りも見てあげたりとか、みんなのモチベーションや技術を上げられる力を持った、とても頼もしい子だなと思っていました。お兄様ともすごく仲良くなって、お兄様のお客様への愛の伝え方であったりとか、娘役の目をハートにさせる男役技術をどんどん手に入れて。私は、学年はぴーちゃんより全然上ですけれども、一緒に組ませてもらってもキュンとなったりして。
天華:えー、嬉しいです!
音波:お兄様と踊らせていただくと、とても温かい愛で、ぴーちゃんと踊らせてもらうとパッションがぶつかるような熱いダンスが踊れたので、すごく楽しかったです。
天華:いつ見ても可愛いから!
七海:そうなのよ!はるこの可愛さは男役としてもテンションがあがる!
音波:お2人からは、本当に引っ張っていただいたなと思うので、こうして退団してまた3人でご一緒できるのが、本当に嬉しいです。
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舞台「サイボーグ009」配信詳細
https://im.akimg.tv.rakuten.co.jp/content/37/40/477304/main.jpg https://live.tv.rakuten.co.jp/content/477304/
ライブ配信日時
【5月18日初日夜公演】
ライブ配信:5月18日(土) 配信開始:16:30 / 開演予定:17:00
見逃し配信:見逃し配信準備完了〜5月24日(金) 23:59
【5月18日初日夜公演】の視聴チケットはこちら
【5月25日昼公演】
ライブ配信:5月25日(土) 配信開始:11:30 / 開演予定:12:00
見逃し配信:見逃し配信準備完了〜5月31日(金) 23:59
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【5月25日夜公演】
ライブ配信:5月25日(土) 配信開始:16:30 / 開演予定:17:00
見逃し配信:見逃し配信準備完了〜5月31日(金) 23:59
【5月25日夜公演】の視聴チケットはこちら
作品情報
舞台「サイボーグ009」
2024年5月18日(土)~ 5月26日(日):日本青年館ホール
世界中に戦争を引き起こし、兵器を売りつける謎の組織「黒い幽霊団(ブラック・ゴースト)」に誘拐され、最強の兵士=兵器であるサイボーグに改造されてしまった少年・島村ジョー。
世界各地から集められ、同じように改造された8人のサイボーグ戦士達とともに反旗を翻し、襲い来る黒い幽霊団の刺客に立ち向かうーー。
原作:石ノ森章太郎
演出:植木 豪
脚本:亀田真二郎
出演:
009/島村ジョー:七海ひろき
001/イワン・ウイスキー:天華えま(声の出演)
002/ジェット・リンク:高橋駿一
003/フランソワーズ・アルヌール:音波みのり
004/アルベルト・ハインリヒ:里中将道
005/ジェロニモ・ジュニア:桜庭大翔
006/張々湖:酒井敏也
007/グレート・ブリテン:川原一馬
008/ピュンマ:Toyotaka
0010/プラス 、シキ:滝澤 諒
0010/マイナス、リク:相澤莉多
スカール:中塚皓平
アイザック・ギルモア:大高洋夫
[BG SOLDIERS]
HILOMU Dolton KIMUTAKU KENTA GeN 加藤貴彦 神谷亮太
※石ノ森章太郎の「ノ」の字は、約60%縮小が正式表記。
Rakuten TVで視聴する
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