そして後編では、Rakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品から、おすすめ作品をセレクトしてもらい、それぞれのおすすめポイントや思い出を語ってもらった。
(文:岩村美佳)
https://news.tv.rakuten.co.jp/2022/08/manakaayu02.html 【後編】愛加あゆさんインタビュー:ミュージカル『ピピン』出演 https://news.tv.rakuten.co.jp/2021/09/210908yumesaki.html 夢咲ねねさん独占インタビュー!ミュージカル『October Sky-遠い空の向こうに-』出演
――『ピピン』のご出演が決まってどんなお気持ちですか?
自分が出演することになるとは思わず、面白そうだなと初演を観に行って、ものすごい衝撃を受けた作品でした。観終わった後も、しばらく余韻に浸っていましたが、他の作品とはまた違う浸り方で、ずっと心に残っていました。キャサリン役が決まって、まず驚きとともに、あの素晴らしい作品のなかに自分も入ることができることが、ものすごく嬉しい気持ちでいっぱいです。
――他の作品と違う余韻とは、どんな感じですか?
各場面で興奮度が高かったですが、ピピンのおばあちゃん、バーサの場面でバーン!と。
それまでの場面も素晴らしいサーカスのような大エンタテインメントが繰り広げられて興奮しているのに、そのシーンでは、さらに超える、「人間ってこんなことまでできるんだ」という衝撃がありました。無意識に声が出ちゃったり、拍手をしたり、涙が出てきちゃったり。その後も、ものすごく心が動かされて、クライマックスではびっくりしすぎて、本当に終わった後、自分が今まで味わったことのない感動だったんです。だから言葉にできなくて。先日、次の作品が『ピピン』だという告知をツイートした日が、ちょうど3年前に自分が観た日だったんです。
――すごいタイミングですね。
前に観たのを引用RTしようと思って探していたらちょうど同じ日で、その時の感想を読んでみました。その時の自分の気持ちがありのまま書かれているわけじゃないですか。出演者の方との写真を一緒に載せているのですが、観終わった後の衝撃と、どう表現したらいいかわからないけど、すごく深みがある言葉たちが描かれていて。興奮があった後に、それを覆すほどの感動をもたらされた、本当に衝撃を受けた作品ですね。
――観客目線でも、届ける側としても、どっちの目線から観ても他の作品とは違ったのですね。
そうですね。職業柄、いろんな舞台を観ていますが、こんな舞台が作れるんだと。こんな世界がミュージカルにあったんだという驚きもありましたね。
――今度はそれを届ける側としては、どんなことを考えていますか?
私が日本初演を拝見した時に、皆さん素晴らしいパフォーマンスをされていました。今回はほぼキャストが変わらない中、ピピン役の森崎さんと私は新しく入るので、すごくプレッシャーを感じて、緊張もしています。
一度仕上がった世界に一から入るのは、ものすごくドキドキして、色々頑張らなければという思いもありますが、本当に作品が素晴らしかったので、この作品に自分も乗っかって、自分が感じたような想いをお客様にも感じていただけるように、精一杯楽しみながら務めたいなと思っています。
――出演するとなって、周りの反響はいかがでしたか?
すごかったです!出演していた方たちからも「すごく良いカンパニーだから!」という言葉や、自分で言うのもおこがましいのですが、「あゆっちにすごく合っていると思う!」という温かい言葉を頂いたので…プレッシャーも勿論ありますが、今回の私が演じるキャサリンを稽古のなかで探していきたいなと思ってます。
そしてお客様の中にも「1回観たので感動した。もう1回観たい」と言ってくださる方もいれば、私がきっかけでこの作品を知る方もたくさんいらっしゃったので、その方々に伝えていけたらいいなと思っています。
――これまでたくさんの役を演じてきたなかで、キャサリン役は、どういう風に捉えていますか?
この作品は劇中劇みたいな作りですよね。サーカスのなかで、ピピンが自分探しの人生を歩んでいって、みんなそれぞれが役割を担い、一座のプレイヤーとして役を演じているなかで、私は一幕クラウン、二幕はキャサリンを演じる一人のプレイヤーという役どころ。でもキャサリンだけが、自分の意思で台本からはみ出てゆくといいますか、今回のピピンから影響をもらい、そこから違う世界に自らの意思で行く。もちろんピピンは自分の意思で進んで行くのですが、その他で唯一同じ行動をして、影響を与えて影響をもらってという役どころだと思うので、ちょっと他のみんなとは違う役割です。みんなそれぞれ役を全うするなか、キャサリンだけちょっと演じるのも間に合わなくて下手くそだったり、遅れてきたり。そういう可愛らしさもありながら、やはり根本には未亡人という設定で、この作品はポップな感じで描かれてはいますが、戦争とかそういう題材が、考えると深い部分はたくさんあります。
キャサリン、そしてキャサリンを演じるこのプレイヤーには息子がいて、辛い経験をしてきたというところが、奥深くは描かれてはいないですが、人生をピピンより長く歩んできたからこそ、何か影響を与えられる存在なのかなと思っています。私も人生の先輩方にとってはまだまだ未熟者ですが、自分が今の年齢でいろんな経験をしてきたものを活かし想像を働かせつつ、ピピンとともに影響を与え、影響をもらいながらやっていきたいなと思っています。
――物語のテーマの「自分探し」について、たくさんの作品を演じたり観たりするなかで、この作品ならではのどういうところに一番惹かれますか?
クライマックスですね。一番大事なものを、この作品ならではの伝え方で、すごい演出とともに描かれる。最後に、ピピンだけじゃなくて、テオがひとりで歌うところになって、また初めの歌で終わるところから、物語が続いていくのだと感じました。やはり誰しもがみんな物語を持っていて、子どもの頃から、一から自分を探していくんだというところに繋がっていくのが、さらに素敵だと思います。そしてピピンとキャサリンもずっと続いていくのだ、と想像できるあの終わり方が、そこに至るまでも含めてすごく素敵だなと思います。そのなかで、この大エンタテインメントが、お客様も楽しみながらずっと歩んでいけますし、素敵だなと思います。
――まだ観たことのない方々に、絶対見逃しちゃだめというポイントはありますか。
どこだろう!?もう、とにかく!すごいんですよ!
私が観た時は劇場の端のほうの席でしたが、1場面1場面が、楽しくて……。命がけでやっているこの作品について、出演者の皆さんが、開幕前にインタビューとかで答えられていたんです。そこまでなのかな?と思って観に行った時に、本当に命がけだから「むしろやっていいんですか!? 大丈夫!?」と思ったぐらいでした。みんなすごいことをやっている。今こんなことをやっているのは『ピピン』しかないです!
――人間の限界に挑戦みたいな。
本当に。でもそれを皆さんがすごいエネルギーで、パワフルで、楽しそうにやっている空間自体がすごくて、あの時はコロナがありませんでしたから、客席でもう「わあ~!」って声が出ちゃっていたんです。別に盛り上げようとかじゃなくて、「ふおお…!」って声が漏れてきちゃう。今回はコロナ禍で声を出すのは難しいかもしれませんが、皆さんそれぐらい自然に、内から感情が出てしまう作品だと思うので、その感情を味わいに来てほしいです。多分、観終わった後に、今まで眠っていた感情が呼び起こされる作品だと思います。私もそうでしたから。
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作品情報
ブロードウェイミュージカル『ピピン』
⼈⽣の⼤いなる⽬的を模索中の若き王⼦ピピンは、美しくカリスマ的なリーディングプレイヤーが率いるアクロバットサーカス⼀座に誘い込まれる。⼀座が披露するのは、⼈⽣の⽬的を探し求めるピピンの壮⼤な物語。⽗が統治する故郷に戻ったピピンは、⽗に認めてもらおうと、戦への同⾏を志願するも、戦の空虚さに気づき、もっと別の<特別な何か>を求めて旅に出る。「悩んでばかりで⼤切な時間を無駄にせず、⼈⽣を楽しみなさい 」と説く祖⺟に感化され旅を続けるピピンは、さまざまな愛のかたちを知るが、やがて⼼を伴わない愛は無意味だと悟る。戦に出ても、空虚な恋愛に耽っても、⼼は満たされないと知ったピピン。旅の最後に全てを捨てて彼がようやく⾒つけた本当の幸せとは・・・
●脚本
ロジャー・O・ハーソン
●作詞・作曲
スティーヴン・シュワルツ
●演出
ダイアン・パウルス
●振付
チェット・ウォーカー (in the style of Bob Fosse)
●サーカス・クリエーション
ジプシー・シュナイダー(Les 7 doigts de la main)
●出演
森崎ウィン、Crystal Kay(クリスタル ケイ)、今井清隆 、霧矢大夢 、愛加あゆ 、岡田亮輔 、
中尾ミエ(Wキャスト)、前田美波里(Wキャスト)
高畑遼大(Wキャスト)、 生出真太郎(Wキャスト)
加賀谷真聡、神谷直樹、坂元宏旬、茶谷健太、常住富大、石井亜早実、永石千尋、伯鞘麗名、妃白ゆあ 長谷川愛実 、増井紬
他
【東京公演】
2022年8月30日(火)〜 9月19日(月・祝) 東急シアターオーブ
【大阪公演】
2022年9月23日(金・祝)〜 9月27日(火) オリックス劇場