観る人に勇気を与えてくれる“一念発起”映画
バーレスク
まずは『バーレスク』。アイオワの片田舎で暮らすアリは歌手になる夢を追いかけて大都会ロサンゼルスを目指した。テスが経営するクラブで、アリは自分が思い描いていた憧れの世界に出会った。それがセクシーなダンサーたちがゴージャスなショーを繰り広げる“バーレスク”だった。何度も断られても諦めずに食らいつく。それくらいバーレスクに魅了されていたアリは、ショーへの参加が認められると“好き”という熱意と才能で頭角を現していく。クリスティーナ・アギレラ演じるアリの成長を見ていくのが楽しい作品だ。
ドリーム
続いては『ドリーム』。NASAのラングレー研究所で働く頭脳明晰な3人のアフリカ系アメリカ人女性が登場するこの作品は、特に“働く女性”に勇気を与えてくれる物語となっている。物語の舞台は1961年。アメリカがソ連と宇宙開発競争を繰り広げていた時代に、宇宙特別研究本部に数学者のキャサリンが配属された。白人男性ばかりの職場環境は彼女にとって劣悪で、彼女の同僚で管理職への昇進を願うドロシーとエンジニアを目指すメアリーにもキャリアアップを阻む大きな壁が立ちはだかっていた。人種差別や性差別、働きながらの子育てに対する偏見や障害など、くじけてしまったとしても無理はない状況だが、強い意志で挑戦し続け、仕事と家庭を両立させて、歴史的偉業をも成し遂げていく。これがフィクションではなく、実話をベースにした物語だからこそたくさんの勇気を与えてくれる。
幸せのちから
ウィル・スミス主演の『幸せのちから』は、どん底の生活から一念発起して生活を、人生を変えていく物語。1980年代、骨密度を調べる機械を売るセールスマンのクリス・ガードナーは妻と5歳の息子との3人暮らし。しかし、モノは売れず、家賃が払えず、妻は出て行き、家を追い出され、貯金も尽きてしまうという“どん底”へ。息子はバスケット選手になるという夢を諦めようとしたが、“夢があったらそれを守るんだ”と助言する。それは同時に自分自身にも向けた言葉でもあったのだろう。ガードナーはリスクがあるのを承知で、自分の才能を信じて一流証券会社へ入社することを決意。研修期間の半年間は無給で働かされ、20人いるインターンの中から本採用されるのは1人だけ。息子のため、そして自分のために、そんな過酷な挑戦に挑む。この奇跡のような物語も、実話をもとにしたもの。何かを成し遂げるためのヒントがこの作品にしっかりと盛り込まれている。
シェフ 三ツ星フードトラック始めました
最後は、『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』。ロサンゼルスの有名レストランで総料理長を務めるカール・キャスパーは、メニューに口を出すうるさいオーナーや酷評した批評家と盛大にもめて店を辞めてしまう。心配した元妻イネスの提案で故郷のマイアミに、息子パーシーも連れて訪れると、そこで口にしたキューバサンドイッチの美味しさに感動し、フードトラックを使って移動販売を始めることにした。移動販売をすることを知った元部下のマーティンがカールのもとに駆けつけ、夏休み中のパーシーも含めた3人でのフードトラックでの旅が始まった。“作った料理で人を幸せにしたい”という思いを持ち続けているカールの移動販売は、パーシーがSNSを使ってうまく宣伝してくれたおかげもあって、マイアミ、ニューオーリンズ、オースティン、そしてロサンゼルスと訪れる場所で大盛況。息子に大切なことを教えながらも、息子からも教わることの多い旅となった。カールを演じたジョン・ファブローは『アイアンマン』シリーズの監督も務める人物で、この作品では製作、監督、脚本、主演を務めている。主人公カールは料理人だが、“映画”にも置き換えられる物語とも言える。オーナー的な立場の人間や批評家と意見が合わなくても、観る人に楽しんでもらえる作品を作るために自分の道を突き進む。それは可能だということを示したかったのではないかと思われる。自分を変えたいと思う人におすすめしたい作品だ。
(文・田中隆信)
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