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安蘭けいが振り返る!宝塚歌劇団の必見作品3選:インタビュー後編

安蘭けいが振り返る!宝塚歌劇団の必見作品3選:インタビュー後編
1980年代のイギリス北部にある炭鉱町を舞台に、バレエダンサーになりたいと夢を追うひとりの少年と彼を取り巻く大人たちの姿を描き、世界中を虜にした映画『BILLY ELLIOT』(邦題『リトル・ダンサー』)。人々の心を捉えて離さない物語は、2005年に英国でミュージカル化。ビリーの圧倒的なパフォーマンスと、作品の持つ巨大なエネルギーは、2006年に英国ローレンス・オリヴィエ賞4部門、2009年にトニー賞10部門を獲得するなど高い評価を得た。
そんな作品が日本人キャストによって初演されたのは2017年。約1年に渡るオーディションを経て選ばれたビリー・エリオットを中心に、およそ4ヶ月に渡る東京・大阪でのロングラン公演は約16万人の観客を熱狂させ、菊田一夫演劇賞大賞や読売演劇賞選考委員特別賞など数多くの演劇賞を受賞した。演劇界に一大旋風を巻き起こした作品は、コロナ禍真っただ中の2020年一部公演中止を乗り越えて再演を果たし、混沌とした世に希望を届けてくれた。
そんなミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』が、2024年夏、三度目の熱狂の幕を開ける。その舞台でビリーが持つバレエの才能にいち早く気づき、周囲が「男の子がバレエだなんて」と一蹴するなか、ビリーの夢を叶えるべく力を尽くすウィルキンソン先生を演じるのが、元宝塚歌劇団星組トップスターで、退団後ミュージカルを中心に多くの舞台作品で活躍を続けている安蘭けい。インタビュー前編では、本格的な稽古開始を前に、2020年公演からの続投となる役柄や、作品の魅力、新たなビリーたちや共演者への思いを語ってくれた。
更に後編では、Rakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品から、自身が主演するおすすめ作品をご紹介。それぞれのセレクト理由や、当時の思い出もたっぷり語ってもらった。
(取材・文/橘涼香 撮影/中川容邦)
安蘭けい

インタビュー前編はこちら

おすすめ作品その1
シークレット・ハンター-この世で、俺に盗めぬものはない-(’07年星組・宝塚)

60478 https://tv.rakuten.co.jp/content/60478/

─この機会に安蘭さんのファンの方々はもちろん、『ビリー・エリオット』ファンの方々にも、宝塚時代の安蘭さんを知ってご興味を持っていただけたらと、Rakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品からおすすめ作品のセレクトをお願いしました。
まず選んでくださったのが『シークレット・ハンター-この世で、俺に盗めぬものはない-』。安蘭さんの星組トップスターとしてのお披露目公演ですね。

この作品は今言ってくださったように、トップになったお披露目作品ということでセレクトさせてもらいました。私はトップになったのが初舞台から17年目と結構学年が上だったので、男役としては成熟していましたけれども、やはり初めてのトップということで、一生懸命やっていた感じが出ている作品じゃないかなと思います。二番手の男役がこの間まで『カム フロム アウェイ』で一緒だった柚希礼音で、彼女は逆にすごく若い学年で二番手になったので、体当たりで頑張っていた時ですから、そういう二人の関係性もこの作品にはよく出ているんじゃないかと思います。

─現役のタカラジェンヌの方々の心にも残っている作品で、ちょうど今年宝塚を退団される雪組の彩風咲奈さんと月組の月城かなとさんが、それぞれ退団前になさったコンサートで主題歌を歌われているんです。

本当ですか?それは嬉しいです。咲ちゃん(彩風)はこの作品が初舞台ですよね?

─そうです、そうです。それで宝塚人生の出発点として、また月城さんはとても思い入れがある大好きな曲だということで歌われていて、この作品を知らなかったという世代のファンの方々からもいますごく注目されています。

嬉しいな。私も主題歌が大好きで、よく歌っていますし、是非本編も観ていただきたいです。

安蘭けい

─お話としてもとてもよくできていますよね。

そうですね。「この世で、俺に盗めぬものはない」ってサブタイトルからもわかると思うんですが、狙ったものは必ず盗みだすというちょっとルパンのような怪盗の話で。冒頭私は舞台の上から降りてきて登場するのですが、二本立ての一本目が『さくら─妖しいまでに美しいおまえ─』という日本物のショーで白塗り化粧だったので、急いで化粧替えをしなければならなくて。開演10分前くらいには上でスタンバイだったので。

─それは大変ですね!

もう本当に時間が足りなくて、その事をまず思い出しますけど(笑)。児玉明子先生のオリジナル作品で、最終的には幸せになるお話ですし、素敵だったなと思います。主人公のダゴベールはオシャレで面白くてすごく魅力のある人で。私は自分が宝塚の二枚目、色で言うと水色が似合うようなタイプではないと思っていて、トップになってもちょっと色が濃い役の方が自分には合っていると感じていたので、所謂宝塚の王子様ではない役柄を書いていただけたのがとても嬉しかったですね。初舞台生のお披露目ともうまくマッチした作品なので、是非観ていただきたいです。

おすすめ作品その2
赤と黒─原作 スタンダール─
’08年星組・名古屋特別・千秋楽
’08年星組・ドラマシティ

60514 ’08年星組・ドラマシティ https://tv.rakuten.co.jp/content/60514/

─続いてあげてくださったのが『赤と黒─原作 スタンダール─』です。

『赤と黒』は私が宝塚に入る前、受験生の時に涼風真世さんが主演された時に観劇して、涼風さんがとてもかっこよかったですし、お話もすごく好きになってスタンダールの小説を買って読んでさらに夢中なりました。こういう作品がやりたいと思い続けていて、宝塚に合格して、団員になると「宝塚おとめ」という生徒名鑑に全員載るのですが、その「やりたい役は?」という設問に、毎年毎年「『赤と黒』のジュリアン・ソレル」と書いていました。柴田侑宏先生、いまはもうお亡くなりになられたのですが、柴田先生の作品も大好きだったこともあり、柴田先生が書かれた『赤と黒』をやりたい、という思いがずっとあったので、それがいよいよトップになる時に夢が叶いやらせてもらえた、本当に思い出に残る作品なので、紹介させてもらいました。

─そこまで念願されていた役柄、作品を実際に演じてみていかがでしたか?

思い描いていたままでしたね。やっぱり柴田先生が演出してくださるというのも私にとって大きな意味があることで、私が憧れて思い描いていたジュリア・ソレルをそのままできるということに、本当にやりがいを感じていました。涼風真世さん主演バージョンに出演していらした若央りささんが振り付けとして入ってくださってもいたので、私にとってはまさに夢のような作品でした。

─安蘭さんの男役時代の素敵さがギュッと凝縮されている作品ですよね。

本当ですか?ありがとうございます。なんでこんなにジュリアン・ソレルに惹かれるのか自分でもわからないんですが、若さゆえの愚かさがいっぱいに詰まっていて、大人になったら笑っちゃうようなことを言ったりやったりするんですよね。こんなことをしたら絶対こうなるよって大人には見えるんですが、若い時って見えなくて。そこが私の中でとてもキュンキュンするポイントなんです。だから観ていただきたいし、宝塚でもまた上演して欲しいですが、いまはやっていないのかな。

─昨年、現星組トップスターの礼真琴さんがフレンチミュージカル版の『Le Rouge et le Noir〜赤と黒〜』を演じていて、それも素晴らしかったのですが、柴田作品とは視点から違うので、見比べていただくのもまたすごく面白いと思います。

そうなんですね。では宝塚オリジナルの『赤と黒』も是非ご覧になって下さい!

おすすめ作品その3
龍星─闇を裂き天翔けよ。朕は、皇帝なり─(’05年星組・東特・千秋楽)

60573 https://tv.rakuten.co.jp/content/60573/

─そしておすすめ作品最後が、これもまた極めつけという感じです。

はい、『龍星』でございます!何を選ぼうかなと考えていて、他にもこれもいいなぁと思うものが色々あったのですが、この作品は私が選ばないと、なかなか選んでくれる人がいないのではないかと思って、選ばせてもらいました。これも児玉明子先生の作品で、現実にあったら大変なことだし、あまりにも主人公が可哀想過ぎて、いまこうやって思い出しても辛くなるくらいですが、もしかしたらこういうことがあったかもしれない、そう思わせてくれる力のある作品です。主題歌が「星を継ぐ者」で、私がまだトップになる前で、歌詞にもタイトルにも私にトップになって欲しいという思いを込めて児玉先生が書いてくださっているので、歴代星組を継いでいってくれている子たちにも歌って欲しいなと思える曲です。

─実際に皆さん歌われていると思います。逆においそれとは歌えないというくらい、大切な曲になっています。まさに安蘭さんの為に書かれている作品で壮大ですよね。

ラストシーンが忘れられないですね。「朕は、皇帝なり!」と言って笑いながら終わるんです。私がそうしたいと希望してやらせてもらって。児玉先生とは結構意見を交わしながら作りましたし、そういう発信も受けいれてくださる先生だったので思い入れが強いんですが、大丈夫かな、私だけが思っている訳じゃないですよね?(笑)

─間違いなく大丈夫です!今回改めて拝見しましたけれども、やっぱりすごい作りだなと思いました。

良かった!なかなか宝塚でこういう作品は書かないじゃないですか。ここまで悪いんだけど悲しいという。ですからこういう作品も宝塚でやるんだよ、という思いも込めて是非多くの方に観ていただきたいです。

─たくさんのおすすめ作品をありがとうございました。ミュージカル『ビリー・エリオット』ファンの方にも観ていただきたいですし、また宝塚ファンの方にも是非ミュージカル『ビリー・エリオット』を観ていただきたいと思います。では最後に改めて、この夏とても長い期間の公演になるミュージカル『ビリー・エリオット』を楽しみにされている方たちにメッセージをいただけますか?

映画『リトル・ダンサー』でご存じの方も多いと思いますが、一人の少年がバレエダンサーを夢見て、はじめは冷淡だった大人たちが、最後には街をあげて応援し、彼を支えていく本当に素敵な作品です。ミュージカルをお好きな方はもちろんですが、ミュージカルをまだご覧になっていない方にこそ、是非観ていただきたいと思っています。夏休みですしご家族で観てもらえたら、子供たちにはたくさんの夢に感動してもらえると思うし、大人には自分たちの幼少の頃を思い出したり、いま現在の自分の子供たちをどう育てていこうかと考えていらっしゃる方々にも、心に刺さる作品になっています。ミュージカル入門編としても最適だと思いますし、私は本当に舞台が大好きで、舞台を観ずして一生を終えるなんてあまりにももったいないと思っているので、舞台へのファーストコンタクトとして、この作品を観ていただけたらと思っています。是非劇場にいらしてください!

安蘭けい

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作品情報

ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』

【東京公演】東京建物Brillia HALL
オープニング公演:2024年7月27日(土)~8月1日(木)
本公演:2024年8月2日(金)~10月26日(土)
【大阪公演】SkyシアターMBS
2024年11月9日(土)~24日(日)


■あらすじ
1984年、炭鉱不況に喘ぐイギリス。幼い頃に母を亡くしたビリーは、炭鉱夫の父と兄、認知症の祖母との4人暮らし。
父はビリーに逞しく育って欲しいと、ビリーにボクシングを習わせるが、バレエ教室のレッスンを偶然目にしたビリーは、戸惑いながらもレッスンに参加するようになる。
ウィルキンソン先生はビリーの才能をいち早く見抜き、ビリーもバレエに熱中していくが、父は大反対。しかし、諦めきれないビリーの夢が、やがて寂れた炭鉱町をも動かすことに–。

■キャスト
ビリー・エリオット(クワトロキャスト):浅田良舞、石黒瑛土、井上宇一郎、春山嘉夢一
お父さん(ダブルキャスト):益岡徹、鶴見辰吾
ウィルキンソン先生(ダブルキャスト):安蘭けい、濱田めぐみ
おばあちゃん(ダブルキャスト):根岸季衣、阿知波悟美
トニー(兄)(ダブルキャスト):西川大貴、吉田広大
ジョージ:芋洗坂係長
オールダー・ビリー(トリプルキャスト):永野亮比己、厚地康雄、山科諒馬 ほか

Rakuten TVで視聴する

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