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【前編】珠城りょうさんインタビュー:舞台『マヌエラ』出演

【前編】珠城りょうさんインタビュー:舞台『マヌエラ』出演
珠城りょうの宝塚退団後初主演舞台は『マヌエラ』。第二次世界大戦直前の「上海の薔薇」と呼ばれた実在の日本人ダンサー、マヌエラの愛と激動の半生を、音楽×ダンス×芝居で描く。1999年に上演して以来、24年ぶりの上演だ。
インタビュー前編では自身の新たな挑戦になるという本作の物語や登場人物の印象、ダンスの表現などについて聞いた。

そして後編では、Rakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品から2作品をセレクトしてもらい、それぞれのおすすめポイントや思い出を語ってもらった。
(文:岩村美佳)

https://news.tv.rakuten.co.jp/2022/12/tamakiryo01.html 【前編】珠城りょうさんインタビュー:舞台『マヌエラ』出演

――『マヌエラ』の出演オファーを受けられたときのお気持ちを教えてください。

お恥ずかしいのですが、この作品のことを存じ上げなかったんです。実際に当時の台本を拝読させていただいて、非常にやりがいがある題材だと思いましたし、普段よく拝見しているPARCOさんのステージということで、ぜひやらせていただきたいと思いました。オファーをいただいたことが、非常に嬉しかったです。

――台本を読んだ印象と、どういうところに物語の魅力を感じたかを教えてください。

とてもわかりやすかったです。第二次世界大戦前の激動の時代を描いているということで、一見ヘビーな内容かなと思うのですが、そこに生きている人々の思いや考え方が読んでいるだけでダイレクトに伝わってきたので、実際にそこで生きる人々として演じて、その言葉で話せば、もっと響くものがあるのではないかと。ご覧いただく皆さまの心に、この作品に込められているたくさんのメッセージが伝わると思いました。
物語全体の印象としては、世界観が重厚で大人っぽい雰囲気です。作品全体に色気があるような気がしています。上海という場所をモデルにしているからか、独特の雰囲気が出るのではないかと本を読んだだけでも感じたので、実際に音楽と衣装がついて、セット、照明が加わったときに、どんな世界観になるんだろうと非常にワクワクしました。宝塚は現代劇も多いですが、どうしてもヨーロッパの作品が多いので、上海という独特な街の雰囲気が非常に新鮮でした。
又、千葉さんが演劇的にとても面白い演出を考えて下さっているそうで、とても楽しみです。

――マヌエラの印象と、どうアプローチしようと思っているかをお聞かせください。

彼女は非常に誇り高くて、それは単にワガママでプライド高いというわけではなく、自分の信念のもとに動いて発言しているのをすごく感じました。揺るがない強さをもっていると非常に感じましたが、同時にひとりの女性としての弱さ、寂しさ、切なさ、かわいらしさも持ち合わせた人。それらがカードをパッと裏返すように変わって、いろいろな面が見えていく人物だなというのは、資料や本を見て思いました。ただの強い女性ではなく、何か思うことがあるから、そういう行動や発言にいたっているという、そして迷いや疑問が彼女の中にある。きちんと観ている方に伝わらないと、前半部分はどこかとっつきにくい、嫌な女性だなと思われてしまうかなと。中盤、後半とストーリーが進むにつれて、彼女の心の揺れや何を思っているのかをより繊細に表現していくことによって、彼女の人間性がより魅力的に見えてくると思います。なぜ「上海の薔薇」と呼ばれて、多くの方から愛されていたのかがわかると思うので、そこを大事にアプローチしていきたいと思っています。

――女性としてのかわいさや、弱さもあるという部分は新鮮ですか?

ちょっとクスっとなっちゃいます(笑)。ネタバレになってしまうので、多くは語れませんが、うまくいかなかったときに拗ねちゃったり、すごく落ち込んだりするところを包み隠さず出したりするんです。普段ツンケンしているのに、そういう部分が垣間見えると、ちょっとかわいいなと。人間らしい部分があると感じますし、ひとりの女性としてとてもチャーミングに見えました。恥ずかしがらずに、大胆にやった方が彼女のチャーミングさが出ると思うので、今からどういうふうに演じたらいいかなと考えているところです。

――マヌエラと似ている部分はありますか?

私がこういうことを申し上げるのは失礼かと思いますが、非常に正直すぎるし、人間くさすぎて不器用な生き方しかできない人のような気がして。私も自分の心に嘘がつけないので、そういった部分では非常にマヌエラさんと似ているのではないかと思います。彼女は、これは違うのではないかと思ったときに、多分それを流すことができないと思うんです。私も似たようなことを思うことがあるので、きっとそういった部分は彼女の人間性に共感しながら作っていけるのかなと、おこがましくも考えております。

――マヌエラはSKD出身、珠城さんも宝塚歌劇団出身です。ショーをメインにする劇団は少ないので、そういった出自も似ていますね。

そうですね。妙子さんは足並みを揃えて、何か違うことを言ったら怒られるからやめたと自伝に書いてありましたから(笑)。その辺りは私とは違う部分ではありますが、共演者の方たちと同じ釜の飯を食べるみたいなところ、華やかなステージという部分でも、環境は似ているかもしれませんね。

――そのマヌエラの表現方法の中のひとつに、ダンスがあると思いますが、ダンスについてはいかがですか?

マヌエラのダンスは、もちろん素晴らしい表現だと思うのですが、技術やテクニックなどの点数的なものではなく、心を踊りに乗せて表現することに重きを置いていたんじゃないかと思っています。情熱がほと走るように表現するだとか。お稽古が始まっていないので振りもこれからですが、彼女が踊ることで魂を解放させたり、自分の居場所なんだと言い聞かせていた姿をどうやったらお伝えできるか考えているところです。

――ご自身にとっては、ダンスはどのような表現方法ですか?

私は体育会系なので、ダンス=スポーツと捉えているところがありました(笑)。芸術なんですが、どうしても脚力や跳躍力など自分の身体能力で補えてしまう部分が結構あります。男役時代は、シャープに見せるなど、そういった部分で見せられるところがありましたが、今回はマヌエラという女性としてのダンスとなると、直線的なものよりも曲線的な見せ方が必要とされます。これまでの自分のアプローチでは通用しないと思っているので、どうやったら多くの人を魅了する動きに見えるかを突き詰めていきたいと思っています。

――マヌエラとしてのダンスを習得すれば、また新たなダンスが増えますね。

やはり感情を踊りに乗せてさらけ出すので、ある意味、覚悟が必要になると思うんですよね。思っていることを口に出すくらい、思い切りのよさが必要になる。どういったテイストの振りをつけていただくのかもとても楽しみですが、自分の中では挑戦なのかなと思っています。

――台詞や歌などいろいろな表現方法のなかで、ダンスに対してはどう感じていますか?

宝塚にいるときにいろいろなダンスをやってきましたが、身体能力で補えるのは男役の速い、きびきびした力強いダンスでした。意外とデュエットダンスなどたっぷり音を使って踊るダンスも好きで、何か振りに意味がこめられているようなダンスがとても好きだったんですよね。心の中で言葉を言うではないですが、振りに台詞をつけるようなイメージでいつも踊っていたので、それは今回も使えるのではないかと思っています。マヌエラの思っていることや心の叫びが、何か振りに言葉が透けてくるように見せられたらと思います。

――脚本の鎌田敏夫さんが「踊りは、心にあるものを肉体の動きで相手にぶつけていく。ダンスを通して自由を求めた。それが、ミス・マヌエラの物語です」とお話されています。今おっしゃったように自由に踊ることが大事になってくるかと思いますが、自由に踊ることに対してのダンスへの心持ちはいかがですか?

今、自分自身もいろいろなことをさせていただいて、とても開放的な気持ちになっていますし、表現することが非常に楽しいと思っているので、心を開放していくダンスには、いい精神状態で挑めるのではないかと思っています。この作品の中で、元名ダンサーで教えを請うことになる、パックンさんが演じるパスコラとのやりとりは、かなりマヌエラにとって影響力があると思っています。劇中でも会話するシーンが多いのですが、彼から学ぶことが、愛や思いを踊りに乗せて表現するということを強く考えるようになったきっかけになっているので、それをうまく汲み取りながらできたらと思っています。

――上海の薔薇と呼ばれ、多くの人に愛されたという役どころということもあり、衣装も含めてダンスでも女性的な魅力があるかと思います。

ビジュアル撮影でも華やかな衣装を着させていただいて、自分としても、とても新鮮でした。実際にこれを着てステージに上がるとなったら、また違うと思うので、それが似合うような女性として演じていきたいと思います。多くの人に愛されるには、必ず理由があると思うので、ダンスの表現での魅力的なものもそうですが、彼女の人間性にも人を惹きつけるものがあったと思うので、そこを何度も何度も本を読んで落とし込んでいきたいなと思います。

――新たな珠城さんが拝見できそうです。

やはり挑戦だと思います。ビジュアル撮影のときも、「全然布がない」と思いました(笑)。男役のときは、とにかく女性らしいラインを隠すことが必要で、デコルテも絶対出したりしません。私は普段の私服のときも気をつけていたんです。Tシャツも着ませんでしたし、仮に着るとしても上に1枚羽織るようにしたり、前が開いている服も着ないようにしていたんですね。メンズもので、首が詰まっているものをできるだけ着るように意識していたので、撮影のときにこんなに出るんだと思って(笑)。ドレスですから当然だなと思いながらも、撮影のときはソワソワしていました。

――音楽や振付で、楽しみにされていることはありますか?

玉麻尚一さんは、宝塚時代にも何曲かご一緒したことがあって、かなりドラマティックな曲を書かれる印象があるので、どういった音楽を作ってくださるのか非常に楽しみですし、本間憲一さんはビジュアル撮影のときにも立ち会ってくださって、ポージングもご指導いただきましたが、とても穏やかで、優しい方でしたので、いろいろとご相談しながらマヌエラのダンスを突き詰めていけるのではないかと思っております。非常に楽しみです。

――宝塚を退団されてから舞台や映像作品にも出演されていますが、宝塚時代と比べて変わらないものはありますか?

初めてお仕事でご一緒させていただく方たちともいつもフラットに変に飾ることなく接してきたので、人との関わり方や頂くお仕事に対して一生懸命、誠実に取り組む点においては何ら変わりないと思います。

――宝塚のときはトップとして、今回も座長としてカンパニーを引っ張っていくという立場にありますが、そのあたりの心境の違いはありますか?

宝塚は出演者が80人くらいいる組の顔としてやっていく、組織として100年以上続く伝統ある歌劇団で選ばれてそこに立つ責任感みたいなものがあると思うんです。一人の俳優としてステージに立つことは、感覚的にもまったく違いますし、ましてや今回は男性キャストの方もたくさんいらっしゃいます。女性の方もそうですが、皆さんいろいろな現場でご活躍されていて、キャリアを積んでいらっしゃる方々なので、自分ひとりでどうこうしなくても大丈夫というか。私も外部で主演を務めさせていただくことが初めてなので、変に自分をよく見せようとせず、ありのままの自分で、皆さんの胸をお借りして、一緒にいい作品を作って行けたらいいなと思っています。カンパニーの皆さんと一緒にいいものを作っていきたいという気持ちは、宝塚のときと変わらないですね。

https://news.tv.rakuten.co.jp/2022/12/tamakiryo01.html 【前編】珠城りょうさんインタビュー:舞台『マヌエラ』出演

作品情報

PARCO PRODUCE2023
「マヌエラI am a dancer.Love me?」

永末妙子(珠城りょう)はSKDで将来を期待されながらも、上海に駆け落ちし、生きていくためにダンスホールの踊り子となった。そこで、かつてムーラン・ルージュのスターであったパスコラ(パックン)に見いだされ、国籍不明で美貌の一流スターダンサー”マヌエラ”が誕生する。時は第二次世界大戦前夜。日本海軍士官として上海に滞在する和田(渡辺 大)と惹かれ合いつつ、反発するふたり。妙子が街中で出会った、追われる青年チェン(宮崎秋人)やクラブに出入りする怪しい貿易商の村岡(宮川 浩)など、マヌエラを取り巻く人々も時代の波の中でうごめきながらそれぞれが確かに上海に生きていた・・・。

●脚本
鎌田敏夫 
●演出
千葉哲也
●音楽
玉麻尚一
●振付
本間憲一
●出演
珠城りょう、渡辺大、パックン(パックンマックン)、宮崎秋人、千葉哲也、宮川浩
岡田亮輔、齋藤かなこ、磯部莉菜子、松本和宜、馬場亮成、榎本成志、松谷嵐、横田剛基
伯鞘麗名、永石千尋、平井琴望、佐藤アンドレア、平山ひかる 【東京公演】
2023年1月15日(日)~1月23日(月) 東京建物Brillia HALL
【大阪公演】
2023年1月28日(土)~1月29日(日) 森ノ宮ピロティホール
【福岡公演】
2023年1月31日(火) 北九州芸術劇場 大ホール

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