インタビュー前編では自身の新たな挑戦になるという本作の物語や登場人物の印象、ダンスの表現などについて聞いた。
そして後編では、Rakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品から2作品をセレクトしてもらい、それぞれのおすすめポイントや思い出を語ってもらった。
(文:岩村美佳)
https://news.tv.rakuten.co.jp/2022/12/tamakiryo01.html 【前編】珠城りょうさんインタビュー:舞台『マヌエラ』出演
珠城さんのおすすめ作品はこれだ!
◆『桜嵐記(おうらんき)』(’21年月組・東京・千秋楽)
◆『Misty Station-霧の終着駅-』(’12年月組・東京・千秋楽)
『桜嵐記(おうらんき)』(’21年月組・東京・千秋楽)
432047 (c) 宝塚歌劇団 https://tv.rakuten.co.jp/content/432047/
――セレクトいただいた作品についてお伺いします。退団公演の『桜嵐記』を選んでくださいましたが、選んだ想いをお聞かせください。
宝塚での退団公演ということもありますし、本当にご覧いただいたファンの方だけでなく、宝塚歌劇を好きなお客様からも温かいご感想をたくさん頂きました。私のことを応援してくださっていた方々にとって満足のいく作品で宝塚を去ることができたのが、本当に良かったなと思っています。ずっと側で支えてくれていた月組のみんなの思いも作品の至るところに散りばめられていて、本当に大切な作品ということで選ばせていただきました。
――本当に素晴らしい作品ですよね。月組の皆さん思いも散りばめられているとおっしゃいましたが、皆さんとの具体的な思い出を伺えますか?
私としては自分の退団公演ではあるんですが、不思議と作中では楠木正行として生きているので、珠城りょうの私的な感情が出てくることは一切なかったです。それは演出家の上田久美子先生が一番嫌がることですし、私も役者の個人的な私的な感情が役に乗るのは違うと思っているので、きちんと楠木正行として最初から最後まで生き抜くことを大事にやっていました。ただ、卒業を見守る月組の子たちは、どうしても出陣する姿と私の卒業が重なってしまうから、見送るのがとてもキツかったと。今は組み替えで星組生になってしまいましたが、暁千星君の「戻れよ」の台詞など、浪党の子たちが最後の花道のシーンで、私を見てくれているときのみんなの目線は、言葉がなくてもすごく伝わってくるものがたくさんありましたし、いろいろな思い出がありますね。お世話になった千海華蘭さんがジンベイ役で側にいてくれたりと、そういったご縁を感じたり、ずっと一緒に戦ってきた光月(るう)さんと夏月(都)さんが、ああいった役どころでいてくださったのも、ありがたかったですね。先生がどういう思いで書かれたかはわかりませんが、トップから二番手に引き継ぐような流れに自然になっていたのもよかったのではないかと思います。非常に宝塚らしい和物の作品で卒業できたことは、とても満足でよかったです。
――その引き継がれた月城かなとさんとのシーンも名場面で、映像ならではの寄りカットもありますね。
私は汗でぐっちゃぐちゃだったんですが(笑)。真夏であんな着物を着込んでやっていましたからね。本当なら冬の公演の予定でしたがずれてしまったので、暑さに耐えるしかなくて(笑)。
(公演中止による公演日程変更のため上演時期が約半年ずれました)
――あの場面はいかがでしたか?
楠木正行としての精神状態もぎりぎりの状態の中、彼に「次に進むんだ、生きろ」と言うのが、私は楠木正行として言っているのですが、見ている人は私と月城を重ねて見ているだろうから、お客さまにもいい形でくみ取っていただけるようなシーンになったのではと思います。とても繊細でよかったですね。二人だけになったときの静けさは今思い出しても、いいなと思います。2500人のお客さまが入る広い空間なのに、本当に静かで桜の花だけが散っているような空気感は、毎回とても好きでした。
――桜が美しかったですね。
あの桜が散るタイミングも、全部上田先生の計算ですからね(笑)。このタイミングで降らせる、この台詞のときに散るなど。それは『月雲の皇子』のときからそうでした。必ず計算されていることなので、本当にいろんなものが合わさった総合芸術というか。宝塚時代はすべてのスタッフの方にも本当によくしていただきましたし、皆さんに対する感謝の気持ちが作品を通しても伝えられたかなと思います。
Misty Station-霧の終着駅-(’12年月組・東京・千秋楽)
176989 (c) 宝塚歌劇団 https://tv.rakuten.co.jp/content/176989/
――もう一作品に『Misty Station-霧の終着駅-』をあげてくださいましたが、セレクト理由や思い出をお聞かせください。
いろいろな作品が作品リストにありましたが、自分がトップのときの作品を選ぶのはありきたりだなと思ったので、下級生のころのことを思い出してみました。
当時、まだ下級生で、霧矢大夢さんと蒼乃夕妃さん、お世話になった上級生の方が退団されて組が変化していくときだったので、一つ大きな時代が終わる、環境が変わっていくことを自分自身もすごく実感して、早く大人にならなきゃと、感じていたんですよね。主題歌が霧矢さんにぴったりで、主題歌を聞くと当時のことをよく思い出すんですよね。これから組を背負っていく龍(真咲)さん、側で支えていく明日海(りお)さんの背中を見ていました。お二人のアカペラから始まるシーンがありましたが、私は大階段でお二人の後ろにいて、いつも背中を見て、これから自分がどうやったら今の月組をいい形で受け継いで、かつ龍さん率いる新しい月組の戦力に少しでもなれるのかな、自分に何ができるんだろうと、公演中にずっと考えていて。そのときの前に進まなければいけないと感じていた、責任感が芽生え始めていた、当時の自分を思い出すんですね。本当にお世話になった先輩方が退団していくだけでなく、自分が大人にならなければいけない、成長しなければいけないと、決意を持って日々を過ごしていた、周りの人から学べることは学んでいこうと思ったときだったんです。それを主題歌を聞くだけで思い出すんですよね。自分にとっては思い出がたくさん詰まった大事な作品なので選びました。
――久しぶりに拝見して、当時の珠城さんを懐かしく思いました。
若手のフレッシュ感を出そうとして、キラキラしているんですよ(笑)。もうちょっと抑えたらかっこよく見えるのに、120%くらいの力で踊っていたりするんです。それがまた、すごく頑張ろうと思っているだろうなと思って面白いです。当時の自分は決意を胸に、これから月組のために自分が頑張らないといけないんだと思っていた時期だったので(笑)。
――昨年の花組・月組100周年記念公演『Greatest Moment』でも、霧矢さんたちと共演されましたね。
なぜか『Misty Station』のメンバーに私は入っていなくてすごくショックでしたが、袖で一緒に歌っていました。霧矢さんの『エドワード8世』の主題歌を聞きながら、袖で泣いて、やはりその当時の自分の気持ちがよみがえってくるんです。どんな気持ちで霧矢さんを見ていたのか、どういう気持ちで先輩方の背中を見ていたのか、何を思って日々過ごしていたのか、意外と下級生時代の作品の曲を聞いたりすると鮮明に思い出すんですよね。
――本当に今改めて拝見すると、豪華な皆さんが勢揃いですね。
本当にそうですよ。越乃(リュウ)組長を筆頭に、副組長の花瀬みずかさんがいらして。大好きな方々ばかり、お世話になった上級生ばかりがいらっしゃる大好きな作品です。私がしゃかりきに頑張っている下級生時代なので、探してもらえたら。まだ勢い有り余っちゃってる感が初々しいと思います(笑)
https://news.tv.rakuten.co.jp/2022/12/tamakiryo01.html 【前編】珠城りょうさんインタビュー:舞台『マヌエラ』出演
作品情報
PARCO PRODUCE2023
「マヌエラI am a dancer.Love me?」
永末妙子(珠城りょう)はSKDで将来を期待されながらも、上海に駆け落ちし、生きていくためにダンスホールの踊り子となった。そこで、かつてムーラン・ルージュのスターであったパスコラ(パックン)に見いだされ、国籍不明で美貌の一流スターダンサー”マヌエラ”が誕生する。時は第二次世界大戦前夜。日本海軍士官として上海に滞在する和田(渡辺 大)と惹かれ合いつつ、反発するふたり。妙子が街中で出会った、追われる青年チェン(宮崎秋人)やクラブに出入りする怪しい貿易商の村岡(宮川 浩)など、マヌエラを取り巻く人々も時代の波の中でうごめきながらそれぞれが確かに上海に生きていた・・・。
●脚本
鎌田敏夫
●演出
千葉哲也
●音楽
玉麻尚一
●振付
本間憲一
●出演
珠城りょう、渡辺大、パックン(パックンマックン)、宮崎秋人、千葉哲也、宮川浩
岡田亮輔、齋藤かなこ、磯部莉菜子、松本和宜、馬場亮成、榎本成志、松谷嵐、横田剛基
伯鞘麗名、永石千尋、平井琴望、佐藤アンドレア、平山ひかる
【東京公演】
2023年1月15日(日)~1月23日(月) 東京建物Brillia HALL
【大阪公演】
2023年1月28日(土)~1月29日(日) 森ノ宮ピロティホール
【福岡公演】
2023年1月31日(火) 北九州芸術劇場 大ホール
Rakuten TVで視聴する
432047,176989