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――例えば服装なども、あまり在団時と変わっていらっしゃらないなと拝見しますが、それは意識的なんですか?
意識的にしていますね。私は宝塚の男役というものが大好きで、今も大好きでそれをやり続けているというのもあるんですが、時代的にもジェンダーレスだったり、ユニセックスで着られる服もかなり増えたじゃないですか。だから、宝塚を卒業しても格好いいお洋服だったりヘアメイクでいたりするのが、そんなに街中で浮いていないんじゃないかと思っていて(笑)。スカートを履きたいという気持ちは特にないので、すごく気を付けているというよりは、自然体がこちらですという感じです。
――宝塚を退団してから活動する時に、どういう思いで挑戦しようとされてきたのでしょうか?
宝塚を卒業すると決めた時に、宝塚を卒業してもなお「男役を続けるんだ!」という強い意思があったわけではなくて、私の中で宝塚の現役生、男役としてのやりたいことや目指してきたものを全部やり切ったという気持ちが持てたので、「今だな」と思ったんです。それで卒業して、でもワードローブの中身が変わるわけではなく、髪の毛を伸ばすわけでもなく、髪が伸びたなと思うと美容院に行ってしまい、みたいな感じです(笑)。
男役をいただいたら、「嬉しいな」と思う自分がいて、長く続けたいと思っています。今回いただいたチャンスも、次につなげられるようにしたいなというのが、自分の目標です。
――今、時代が追いついてきた感じがしますよね。
そうなんですよ。私よりだいぶ上級生の方たちは、卒業したらやっぱり髪を伸ばしてネイルをしてスカートを履かなければならない、ヒールを履かなければならないみたいな感じだったんですって、世の中が。それを瀬戸かずやさんからお聞きしたんです。「私の時はそういう時代だったよ」とおっしゃっていて。「私はすごくラッキーだったのかも」と思いました。
――瀬戸さんと同世代ではありますが、七海ひろきさんが先駆けの印象があります。
多様性が認められる時代というか。すごくありがたいですし、七海さんも現役男役さながらの格好よさを保っていらっしゃる先輩がいらっしゃるというのもありがたくて、ああいう風になりたいなという気持ちがあります。
卒業してから出演させていただいた、タカラヅカ・ライブ・ネクスト主催の『2STEP』という作品に、GANMIという男性ダンスユニットと、ダンスを得意としていた宝塚OGの方々とのコラボという作品があったんですが、GANMI側の人間と言われました(笑)。それは褒め言葉として嬉しくて。『前田慶次 かぶき旅 STAGE&LIVE〜肥後の虎・加藤清正編〜』も、リアルに男性の方が男性のキャラクターを演じられている舞台の中で、私だけが「男役」として男性の役を混じって演じさせてもらえたという経験が、本当に嬉しくて。本物の男性の方と並んでも、見劣りしないような自分でいたいなということは思っています。
――今回の作品では、男女両方の性を持ちつつも、外見では男性だと思われている役ですね。
そこが挑戦でもありますね。でもやっぱり漫画を読んでいると、リチャードという人間に、ほぼ全員が惹かれているシーンがあって、そのくらい魅力的なキャラクターなんだなと思うので、どうやったらその雰囲気を醸し出せるんだろうと、一生懸命研究したいなと思っています。
――その人物像は、今どんな風に紐解いていらっしゃいますか?
父のヨーク公リチャードだけが自分を認めてくれたと思い込んでいて、客観的に見たらそれが自分自身にかけた呪いだなとすごく思っていて。そして、とにかく愛されたかった人なんだなと。でも、愛されたかったということも、もしかしたら気づいていないかもしれません。母の愛と父の愛を求め続けて、という孤独な人だったんだろうなという感じです。
でも、孤独だから、何かを望んだら裏切られるから、望むことをやめたんだと思うんですが、そうは言いつつ、やっぱり手を差し伸べてしまうのは、実は結構情の厚いところがあったんじゃないかと思っています。
あとは本当に鈍感な人だと思うんです。そういう自分の機微にも気づいていなさそうな感じがあるので。「戦場が俺の生きる場所だ」という答えを見つけてしまうあたり、絶対にそうじゃないのに、みたいな。ある意味で愚直でまっすぐな人なのかなと思いました。
そこを掘り下げるために、たくさん理解して挑まなければと思うんですが、演じる時は本当に何にも気づかずに没入して、まっしぐらに演じられるようにしたいなと。周りのほうがリチャードの気持ちや焦燥に気づいていて、本人は何も分かっていない…というのをどのように演じるのかが腕の見せ所だと思うので、頑張りたいです。
――関わってくる役がたくさんありますが、共演の皆さんとは何かお話しされていることはありますか?
共演させていただくヘンリー役のTHE RAMPAGEのRIKUさんは、『前田慶次〜』で初めてご一緒させていただいていて、その時にRIKUさんが主役だったんですが、本当に熱い方で、カンパニーもスタッフ含めて丸ごと引っ張ってくださったんです。とてもいいカンパニーで、大変な公演だったんですが、本当に終わりたくないというような熱い公演になったのは、RIKUさんの器とお人柄だと思っているんです。表現者としても、その姿勢にすごく感銘を受けました。その後、今年の2月に飛龍つかさディナーショー『Thankfull~私らしく~』の東京公演に、スペシャルゲストとしてRIKUさんにご出演いただいて。やっぱり『前田慶次〜』でRIKUさんのファンの皆さんも私を知ってくださったし、その逆もまた然り。ファンの方の質も似てる気がするんです。
――LDHの舞台に、宝塚の水美舞斗さんと瀬央ゆりあさんがご出演された『HiGH&LOW THE 戦国』の時も相互作用が起きていましたね。
そうなんです。だから、宝塚と相性がいいのかもしれません。芸事に熱く、まっすぐでひたむきなところや、一生懸命なところが似ていたり。そしてファンの方の温かい感じも似ていて、とても幸せなディナーショーになりました。『前田慶次〜』の時は台詞を交わすシーンがなかったので、一緒にお芝居をしていないんです。今回はお芝居でご一緒させていただけるので楽しみです。
――今回は近い間柄での共演ですね。
本当ですね。甘い歌声を持っていらっしゃるので、ヘンリーの優しさや平和主義なところ、戦いよりも平和みたいなところに、お声があっているんじゃないかなと思っているので、とても楽しみです。
ミュージカル『薔薇王の葬列』
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